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源宗寺の大仏奉加帳 [仏像]

 平戸の大ぼとけで知られる源宗寺。高さ約4メートルの薬師如来と観世音菩薩が安置されています。代々、寺院を管理する藤井家には、源宗寺に関する史料が遺されています。
 そのなかのひとつに正徳3年(1713)の「大仏奉加帳」があります。奉加帳とは、寺社などの造営・修理のために、寄進(寄付)を行った人の氏名や金額を書き連ねた帳面のことです。
 序文の文章が、とても感動的だったので紹介したいと思います。

【原文】
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立正大学古文書研究会 2001『武蔵国埼玉郡平戸村 藤井健一家所蔵文書史料集ー慶長期から享保期ー』p.93、94 より

【訳文】(意訳の部分あり)

 (木版刷)
 ご本尊二体、再興奉ります

 薬師如来 高さ約3.7メートル
 観世音菩薩 高さ約4.03メートル

  絶えてしまうものを継承し、壊れたものを修復することは、長い年月伝え保つための方法であ
 る。縁ある者を励まし、縁なき者を誘っていくのは仏の道に携わるものの務めである。今、源宗
 寺の開山、源宗大法師が建立されたご本尊は、建立後これまで修復されることが無かったため、
 長い年月を経てひどく傷んでしまった。
  かねがねご本尊を再興したいとの願いは胸にあふれていたのだが、誰がその願いを叶えてくれ
 る縁を取り持ってくださるであろうか?源宗寺は貧乏寺で万が一の際の貯えもおぼつかない。そ
 こでこれまで機会の到来をずっと待ち続けてきた。
  ひそかにじっくりと考え直してみると、運命はどのように変転していくかわからない。これま
 での有縁、無縁にこだわることなく、速やかに多くの方々の助力を仰いで、本尊再興の願いを実
 現するべきであると決心した。ゆえに皆様からのご寄付を募るものである。願わくば皆様方にご
 寄付の功徳と、ご本尊薬師如来様、観世音菩薩様のご利益がもたらされますように。

   昔

 正徳3年8月8日(1713年9月27日)
 忍藩領平戸村藤井山源宗寺 印

 (現代語訳:小久保 則和)


 この後に、寄付者の氏名と寄付金額が書き連ねられています。
 当時の人々が、少しずつお金を出し合って薬師如来様と観世音菩薩様を御護りしてきたことがわかる貴重な史料です。
 
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参考文献
立正大学古文書研究会 2001『武蔵国埼玉郡平戸村 藤井健一家所蔵文書史料集ー慶長期から享保期ー』
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福島 喜多方の旅ー會津大仏を訪ねてー その2 [仏像]

  喜多方は福島県の西側に位置し、山形県と新潟県に接しています。県の内陸部なので、東日本大震災の影響はさほど無いように考えていましたが、実際には甚大な被害を受けていました。
 たまたま、災害の前の年に、楼門、本堂、千佛堂の3棟が県の文化財指定を受けていました。そのため、修復費用の一部が県から出ていますが、寺も多くを負担しなければなりません。建物と仏像修復の総工費は、実に11億6千万円。気の遠くなるような金額です。願成寺を訪問した令和元年11月、被害復旧の工事と寄付金募集の活動が続けられていました。
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088E49E2-FD44-4EF1-BAF1-43FB298039BD.jpeg千佛堂
 堂内を一通りご案内いただいた後、庫裡でご住職様にお茶をご馳走していただきました。古い庫裡、崩れ落ちそうな壁。
「自分のことはどうでもいい。自分が生きているうちに寺を何とかしなければ…。」といつも住職が言っている。と案内してくれた秋葉さんが言っていました。感動しました。
 源宗寺も頑張らなければと思いつつ帰路に着きました。
 翌月、願成寺さまからは、源宗寺本堂保存修理事業への寄付金をお納めいただいております。
 またそのほか、牧野先生がこれまでに仏像修復で関わってこられた寺院さまからも、寄付金をいただいております。以下の通りです。
 願成寺さま(福島県喜多方市上三宮町上三宮籬山833)
 地福寺さま(宮城県気仙沼市波路上牧44)
 修善寺さま(静岡県伊豆市修善寺964)
 宮城県気仙沼の地福寺さまは、仏像修復を終えたわずか2年後に東日本大震災に襲われ、津波で甚大な被害を受けておられます。
 保存管理もままならないまま、今にも朽ち果てそうな御堂や仏像たち。事情や程度は異なれど、それぞれ大変な状況に置かれた皆様からのお心とご支援が、活動の大きな支えとなっています。




参考文献
牧野隆夫 2016『仏像再興 仏像修復をめぐる日々』

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福島 喜多方の旅 ー會津大仏を訪ねてー その1 [仏像]

 福島県喜多方市にある願成寺を訪れたのは昨年の11月。現在進行中の源宗寺本堂保存修理事業の参考視察のため、当事業にご協力いただいている吉備文化財研究所の牧野隆夫先生から願成寺についてのお話を伺ってのこと。牧野先生は、「仏像の町医者」と呼ばれ、これまで全国各地で約300体もの仏像修復を手がけられています。牧野先生が修復を手がける仏像の多くは、国からの補助金が手厚く、きちんと保存管理されてきた国宝級の仏像とは違い、地方にあって、補助金も手薄で保存管理もままならず、放置されてきた仏像たち。
 牧野先生が修復を手がけたうちの一つが、福島県喜多方市にある願成寺の阿弥陀三尊像です。通称「會津大仏」と呼ばれています。
 現地では、ご住職様と寺院関係者の秋葉様が温かく迎えてくださり、境内を案内してくださいました。
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 光背の千体化仏で有名な阿弥陀如来座像を中尊とする観音菩薩像、勢至菩薩像の阿弥陀三尊像は、昭和52年に鉄筋コンクリート造りの収蔵庫である今の大仏殿に旧御堂から移設されました。
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 會津大仏の収蔵施設である御堂は、御堂の中に三畳ほどのガラスの部屋を作って、朝の開錠から夕方の施錠まで、そこから何時でも誰でも仏像を見られる工夫がなされています。また御堂の内部は、様々な法要が執り行えるよう手前半分が畳敷きとなっており、仏像を囲むようにして回廊スペースが設けられ、裏側まで仏像を間近に拝観することができます。
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 昨年10月から毎月2回の一般公開を行っている源宗寺ですが(4月、5月はコロナウイルス感染拡大防止のため中止となっています)、保存管理の安全上、普段は扉に鍵のかかった状態で日常的に平戸の大ぼとけを拝むことは困難な状況にあります。
 本堂の修繕を機に、現状を改善し、平戸の大ぼとけが市内、近隣地域の方々に開かれ、より身近な存在になればと思っております。
 願成寺の大仏殿の視察は、源宗寺の本堂の設計や公開における今後の体制のあり方について深く考える機会となりました。


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平戸の妙薬 [仏像]

 現在、保存修理事業が進められている平戸の大仏(源宗寺)。
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 本尊の薬師如来像、観世音菩薩像の胎内からは、馬の病気の薬と神経痛の薬の秘伝書が発見されたとの言い伝えがあります。
 秘伝書に従って調剤された薬は「平戸の妙薬」と呼ばれ有名になり、それを求めて訪れる人が絶えなかったそうです。
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 写真は、源宗寺の管理者、藤井家に残る薬。藤井八重子さん(87)は、藤井家に嫁いで間もない頃、薬を求めてくる方々に、この薬を小さなガーゼで出来た巾着に入れて販売していたといいます。袋に書かれた文字は、漢方の一種「楊梅皮(ヨウバイヒ)」と「栝楼根(カロコン)」かと思われます。
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宝乗院愛染堂ご縁日の開催 [仏像]



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2月23日、恒例となった熊谷市下川上の宝乗院愛染堂のご縁日が開催されました。
護摩焚き法要のほか、市指定有形民俗文化財「愛染明王」及び「藍染絵馬・尾高惇忠筆奉納額」が公開され、多くの来場者で賑わいました。お札の奉納販売や甘酒なども振舞われました。かつては50年に1回の公開に限られていた愛染明王も2017年の保存修理後初の縁日復活以降、毎年公開されています。

また、地元星宮地区の歴史調査なども進み、その成果なども公民館事業で発表しています。
そのひとつである星宮地区文化財マイスター養成講座の様子をYouTubeで公開しています。
どうぞご参照ください。

星宮地区文化財マイスター養成講座「熊谷市星宮地区の文化財」【講座】【星宮公民館撮影】






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浄安寺「お地蔵様の日」(10月23日:熊谷市御正新田) [仏像]


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2013年9月の竜巻で全壊した地蔵堂から「救出」された後に修復を終え、2016年10月に一般公開された「浄安寺千体地蔵」(市指定有形文化財)が、本年も「お地蔵様の日」として10月23日に公開されます。浄安寺には、現在約650体が奉納されています。同日夕方は、参道に灯篭が置かれ、幻想的な雰囲気を感じることができます。先日も熊谷では台風による被害などもあり、文化財の保存に対して改めて意識する契機となっています。


日時:2019年10月23日17時から19時頃
場所:浄安寺(埼玉県熊谷市御正新田248-1)
入場無料





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吉備文化財修復所による「平戸の大仏」調査 [仏像]

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熊谷市指定有形文化財「木彫大仏坐像」(平戸の大仏)の調査を行う吉備文化財修復所の研究チーム

今秋から保存修理工事が実施される予定の源宗寺本堂に安置されている熊谷市指定有形文化財「木彫大仏坐像」(平戸の大仏)の調査を、吉備文化財修復所(牧野隆夫代表、さいたま市北区)の研究グループによって実施されています。二体の仏像の細部にわたる調査を行いながら、今後の本堂保存修理の際に必要な仏像移動などの課題について検討を進めています。

吉備文化財修復所は昭和63年10月20日に、牧野隆夫氏代表として古典彫刻の修復・研究・制作およびそれらに関連する業務を手掛けています。牧野氏は『仏像再興  仏像修復をめぐる日々』などの著作を刊行し、地方の仏像修復を手掛けてきた「仏像の町医者」とも呼ばれています。また、平戸の大仏の本事業に際しては、彫刻文化財の保存を専門とする立正大学仏教学部の秋田貴廣教授もオブザーバーとして参加しています。

今回の事業では仏像を据え置きながら収蔵施設の改修が行われる手法を検討していることから、仏像の保存と合わせて建築設計が必要であることに鑑みて、かつて源宗寺本堂の調査を行った一級建築士・細川末廣氏をリーダーとする建築監理チームを立ち上げ、今回の調査に立ち会いました。


吉備文化財修復所ホームページ
http://www.kibibunn.info/index.html




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源宗寺本堂保存修理事業プロジェクトが「TOWN NEWS NAOZANE vol.45」の表紙と特集記事を飾る [仏像]


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「TOWN NEWS NAOZANE vol.45」表紙


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特集記事

8/1(木)に発行された熊谷地域の情報誌、フリーペーパー「TOWN NEWS NAOZANE vol.45」の冒頭と特集において、熊谷市指定有形文化財「木彫大仏坐像」(平戸の大仏)を収蔵する源宗寺本堂の保存修理事業プロジェクトが紹介されています。二体の仏像を背景に木島一也会長をはじめ委員会メンバーの集合写真が表紙を飾っています。工事費のための寄付募集の案内も含まれています。同紙は熊谷市内の各施設や店舗において無料配布されています。
 また源宗寺本堂の保存修理に関する表紙と記事については抜粋して、熊谷デジタルミュージアムの読書室に掲載しています。実際の冊子を手にできない場合はご参照ください。

熊谷デジタルミュージアム読書室 PDF文庫
http://www.kumagaya-bunkazai.jp/kounanmatinoiseki/town_news_naozane_vol.45_20190801.pdf







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「源宗寺木彫大仏坐像」(平戸の大仏)の特別公開 [仏像]

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大勢の方々が源宗寺を訪れました。

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解説会にも多くの方々が集まり、室外で行いました。

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適宜、本堂内の仏像を前にして解説を行いました。

12月8日、熊谷市指定有形文化財(彫刻)「源宗寺木彫大仏坐像」(平戸の大仏)の特別公開を開催しました。文化財指定後、戦後初の公開として注目を集め、埼玉新聞、読売新聞、毎日新聞など各種媒体でのご紹介もあり、想像以上に終始盛況の公開となり、約1200名ものご来場がありました。資料も複数増刷し、解説会も1回から8回に追加という状況でした。また、テレ玉の撮影取材もあり同日夕方のニュース番組で放送されました。今回の公開は、平戸の大仏と呼ばれている薬師如来と観音菩薩の仏像二体を収蔵する源宗寺本堂の老朽化が進んでいることから、来年度に実施計画中の保存修理事業に向けた機運醸成を目的としました。多くの関心を集め、今後の取り組みに向けての意義深いスタートアップになったことを感じたところです。今後、保存修理委員会によって修理費の寄付募集が行われる予定です。ご協力を宜しくお願い致します。


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源宗寺「木彫大仏坐像」(平戸の大仏)の特別公開 [仏像]


熊谷市文化財「平戸の大仏」を特別公開します。

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日時 平成30年12月8日(土)午前10時~午後3時
場所 源宗寺(熊谷市平戸642)  見学無料

源宗寺「木彫大仏坐像」は「平戸の大仏(おおぼとけ)」と称され、
地域の貴重な仏像として保存されてきました。
現在、二体の大仏を収蔵する源宗寺本堂の老朽化が進み、
今後の保存修理事業に向けた機運を高めるために特別公開を行います。
一般に向けの特別公開については、昭和29年11月3日の文化財指定後、初めてとなります。

見学概要
平成30年12月8日(土)午前10時~午後3時
午前11時~ 解説会「熊谷市指定文化財の仏像と平戸の大仏」
    (熊谷市立江南文化財センター職員)

入場無料
交通案内
源宗寺には駐車場がございません。熊谷市ゆうゆうバス・グライダー号をご利用され、バス停「源宗寺入口」から下車5分です。車でお越しの際は上之荘(上之3022-1)の駐車場をご利用ください(徒歩10分)。

 熊谷市指定有形文化財(彫刻)である「木彫大仏坐像」(薬師如来・観世音菩薩)の二体は、木造寄木造のものとしては規模も大きく、背丈(高さ)が約3.5mあります。これは埼玉県内最大規模で、全国的にも希少なものです。戦後初、市の文化財指定後初めての一般公開となります。併せて、仏像の概要についての解説会と、場内での適宜説明を行います。仏像の収蔵施設「源宗寺本堂」については、平成31年度の実施に向けた保存修理事業を計画しています。現在、保存修理委員会の発足に向けて、所有者の藤井氏と熊谷市教育委員会は仏事を担う東竹院(熊谷市久下)、檀家、各位との調整を進めています。

問合せ 熊谷市立江南文化財センター 電話048-536-5062


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