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遺物整理の現場から 寺内廃寺出土「灯明盤」の「文字」2 [整理作業]

 写真の土器は寺内廃寺出土灯明盤の「刻書土器」例の二例目です。2点出土していますが、読むことができませんので、示す意味が図りかねます。「上」「ハ」または、「一」「六」の合字でしょうか。それとも記号なのでしょうか。「赫坏」の文字と同筆のように思われ、一応文字と考えますがお気づきの方はぜひご教示ください。「赫坏」と同様に坏内底面にヘラ書きされています。
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寺内廃寺出土刻書土器
 なお、字画で類似する例では本遺跡より2km内の宮下遺跡より「卜之」の合字と推定される墨書が5点出土しています。異なるように見えるのですが字配・表記・5画と共通する点もあり、注目しています。
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宮下遺跡Ⅲ出土墨書土器

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遺物整理の現場から 寺内廃寺出土「灯明盤」の「文字」1 [整理作業]

 寺内廃寺から日々の燃燈や法会に使われた灯明盤に文字が残されている資料を前回(出土瓦に残る文字1「郡名瓦―その1」)までに墨で書かれた「墨書土器」として紹介しましたが、今回は「ヘラ書き」された例を取り上げます。
 この文字資料は「刻書土器」と呼びます。本例刻書は土器を焼く前に書かれた文字で、文字の内容によって土器の性格付けがなされたことがわかります。このことは、共通する形、共通する特徴を持った寺内廃寺出土の土器は「灯明盤」として造られた可能性が高いと考えられることです。他の灯明盤では須恵器坏や碗、蓋も使用されていましたが、これらは転用品で本来はそれぞれの用途に使われる日用什器のうつわです。寺内廃寺の灯明皿は専用品は「灯明盤」、転用品は「灯明皿」と区別できると考えています。
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写真「赫坏」のヘラ書文字 灯明盤の内・側・底面

 この「灯明盤」の内底面には「赫坏」の文字がヘラ書きされ、「かくはい」と読むことができます「赫」は「ひかりかがやく」という意味と考えられ、灯明盤にふさわしい文字だと思います。この形をした灯明盤は一定の数が認められることから、寺院内での常用品とも考えられる一方、特別な法会のために特注されたとも推定されます。須恵器坏・碗などの日用什器のうつわは不足分として臨時的に使用されたと考えることもできます。まだ観察と検討が必要な状況にあります。
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遺物整理の現場から 土器に残る刻み目 [整理作業]

 古代の土器は完全な形で出土することは稀です。もともと衝撃に弱い土器は壊れやすく、日常使いの消耗品でしたから、発掘される土器は時代を遡るほど風化し、僅かの破片しか残らなくなります。完全な形を残す土器は大変貴重で稀な例ともいえます。
 そんな土器の小破片でも時代を特定できる資料となることから、整理を進めるうえで土器の観察を詳細に行っています。写真は寺内廃寺の東院集落に重なる縄文時代中期の集落跡から出土した貯蔵用の深鉢形の土器片です。粘土紐を巻き上げる方法で造られた鉢の胴部の一片です。粘土を重ねて接着した部分が平坦な凹凸となっていることが多い中で、写真の破片には刻み目が施されています。これは模様ではなく、粘土同士の接着をより強固にするためになされた工夫で、現在でも見る陶芸の基本技法です。偶然この接合部分で剥離したらしく縄文人の土器の作り方法を知ることができました。
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接合部にいれた刻み目
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刻み目に入り込んだ粘土の膨らみ
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粘土ひもの痕跡を残す凹凸状の剥離面

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遺物整理の現場から 土器に残る焦げ跡 [整理作業]

 寺内廃寺の寺域内からは多量の縄文時代遺物が出土しています。古代寺院の立地が元々縄文時代の遺跡の上になされたと考えられることがあり、中期の住居跡が東院集落内などから発見されています。また、基壇土や整地土などからも土器や石器の出土もあります。
 寺内廃寺の北側には西原遺跡という中期後半の大きな集落遺跡が発掘されています。寺内廃寺の寺域内に広がる縄文時代遺跡は西原遺跡の広がりの中に納まるものでしょう。写真は、煮焦げの付着した土器片です。このお焦げは有機物の炭化したもので食物由来のものと考えられ、ドングリやシイの実などのでんぷん質が焼き付いたと想定され、本例も当時の煮炊きに使われ煮汁や油分が固着したと考えられます。
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縄文時代中期加曾利EⅢ式土器の内面について ↑炭化物の拡大

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