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寺内廃寺の整理から―1 ―古代の坏は左利き― [奈良平安時代]

 寺内廃寺の東院集落の遺物整理から気付いたことを紹介しています。平安時代初期以降(9世紀代)、ほとんどの須恵器坏は底部に回転糸切離痕がそのまま残っています。製作地は南比企窯跡群と末野窯跡群からもたらされるもので、時代が下がるほど末野窯か、未確認の末野系窯ではないかと考えています。寺内廃寺の出土品の場合、底部や体部に墨書文字の痕跡が残ることが多いので、舐め回すように観察しています。
 写真1~4で見るとおり、糸切り痕の位置が左右に偏っている例がいくつか出てきました。この糸切の偏りは何を示すかというと、ろくろの回転方向が右回転か左回転かということです(註)。この差は工人が右利きか、左利きかということを示すものと思います。今まで数百の須恵器坏を見てきましたが、ほとんどの糸切痕は写真3,4に区分されます。つまり、右回転、右利きの工人による製作と思われます。写真1、2のような左回転、左利き工人の製品はちょっと珍しいと思います。
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写真1 写真3
image005s.jpg image006s.jpg
写真2 写真4

 ※(註)右回転と左回転 ろくろの回転の定義は作業者から見て(上から見て)区別する。時計回りを右回転、逆時計回りは左回転になります。粘土柱と製品を回転のまま糸を輪掛けし左右に絞るように手前に引くと粘土柱と引き上げた製品が糸によって切り離せる。このとき粘土柱と製品の坏底部に回転により偏った弧線が糸切痕として残る。坏底部の糸切痕が左に偏っているものは右回転、右に偏っているものは左回転になります。
 日本では現在までほとんど右回転が主流ですが、中国では左回転が主流のようです。この左右の差は単に利き腕の差だけではないような気もします。
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