田島良生 句集『鶏羅山』 [句碑・歌碑]
句集『鶏羅山』
俳句の掲載
俳人・干野風来子による付記
奉納額「鶏羅山」(奥原晴湖揮毫)
熊谷市妻沼在住の俳人・田島良生さんの初の句集『鶏羅山』が刊行されました。
田島さんは妻沼俳句連盟などで活動し、埼玉文学賞を受賞するなど高い評価を得る中で、独自の俳句を追究しています。今回の作品は自作を選句し、1冊に纏められたものです。
題字となった 「鶏羅山(けいらさん)」は、カイラス山(Kailash/Kailas)と呼ばれるチベット高原西部に位置する独立峰(標高6,656m)で、歓喜天の原郷とする伝説も残されています。歓喜天がこの地に眷族(けんぞく)を率いて住み、仏法僧の三宝(経典、僧侶、舎利)を守護するとされている。
この題名の『鶏羅山』は妻沼聖天山に奉納された額から引用し、南画家の奥原晴湖の揮毫によるものです。その額とは、明治10年(1877)6月に奉納された絵馬額であり、東海晴湖(奥原晴湖)の記号が確認できます。奉納者は「木崎駅 願主 齋藤惣四郎寿題」として記されています。昇り龍による彫刻が特徴の額縁構造となっています。規模は小型でありながら、精緻な彫刻が額縁に施されています。奥原晴湖の独特の揮毫と、肉彫り彫刻の技芸が生かされた芸術性の高い絵馬であるといえます。
奥原晴湖(東海晴湖)(1837-1913)は、幕末から明治期の画家。野口小蘋とともに明治の女流南画家の双璧といわれ、また安田老山と関東南画壇の人気を二分したとされています。上川上村(現・熊谷市上川上)に居を構え、画室を「繍水草堂」「繍佛草堂」「寸馬豆人楼」などと称して作品を発表しました。その画風には豪快さが見られ、晩年は非常に鮮やかで色彩豊か、細密な筆致によって独特の南画世界を築きました。