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「もの」と「ひと」の旅―9 ―足元の鉄― [紀行]

 市域では低地の遺跡を発掘すると、多くの場合水田下の沖積土は茶褐色や灰褐色をした粘質土ですが、斑状にあるいはシミ状に茶褐色や赤茶色の模様が見えることがあります。時には固く締まり、掘り出すと赤さびの塊のようになっています。よく見ると中心に穴があり「ちくわ状」をしている場合もあります。この塊は「タカシ小僧」とよばれるもので、土中の鉄分がヨシ、アシなどの水生植物の根に集積したものです。大きく成長したタカシ小僧は、褐鉄鉱の塊で製鉄の原料となるようです。
 荒川の砂州やローム台地の雨道には砂鉄が黒々と洗い出されている場面を見ることがあります。このように現われた砂鉄を丹念に採取し、「たたら」と呼ぶ溶融施設を作り砂鉄を焚き上げて鉄塊を得たのです。このようなたたら製鉄跡は奈良・平安時代に入ると荒川河畔に立地している箱石遺跡(寄居町末野)、台耕地遺跡(深谷市小前田)に発見されています。先の遺跡から素材の供給を受けたと思われる市域の集落遺跡からも小鍛冶を行った遺構・遺物が見つかっており、北島遺跡(上川上)、飯塚北遺跡(永井太田)、西別府廃寺(西別府)、一本木前遺跡(東別府)、塩西遺跡(塩)、宮下遺跡(千代)、熊野遺跡(野原)、寺内廃寺東院集落跡(柴)では炉跡や羽口、鉄滓、鋳型などが出土しています。
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タカシ小僧 酸化鉄塊   中条地区採取

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タカシ小僧の検出状況 中条古墳群・中条中島遺跡
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