SSブログ

出土瓦から ―瓦の布目― [奈良平安時代]

 瓦造に際して素材粘土と整形台との密着を防ぎ、できた瓦の分離を容易にするために整形台には布を敷いており、この敷布の痕跡がそのまま残る瓦が古代では普遍的です。中世以降の瓦は布目をあまり遺さないので、古代瓦を「布目瓦」と呼ぶ元となっています。布目は多くの場合、丸瓦・平瓦とも湾曲面の内側(凹面)に遺されています。
 寺内廃寺から出土している瓦の布目は大まかに粗・中・細の種類がみられます。当時の布は絹を除くと大麻、苧麻(カラムシ)、木綿(ゆう―コウゾ・クワなどの繊維)などが原料で、縦糸と緯糸を交互に交差させる「平織」の布になっています。瓦造りに使われた布と同種の「調布」、「庸布」が東大寺正倉院の宝物として残されています。調布は現物税として納める布、庸布は労役の代納として納める布で、衣服や装飾品の下地など様々な器物に使われています。
kawara1-1.jpg
写真1 布目の細な瓦 1㎝当たり18~20本

kawara1-2.jpg
写真2 布目の粗い瓦  1㎝当たり14~16本

奈良時代の平均的な平織布の糸目は1cm当たり経糸9.4×緯糸7.6本程度のようです(文献1)。もっとも細密な「調細布」の例では、1㎝当たり経16~20本、緯12~14本程です。
 
文献1 布目順郎 1992「目で見る繊維の考古学―繊維遺物資料集成」染色と生活社
nice!(1)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。