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花笠香合、そして香道直心流と鳩居堂 [花]

桜を惜しむ候を迎えました。

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茶室にも吉野山の和歌懐紙を掛けて花笠香合を飾り、花供養をしています。

京都府北区今宮神社摂社疫神社の祭礼に、4月の第二日曜日に行われるやすらい祭があります。鞨鼓を持つ少年と鬼とが花傘を守り、町から町へ踊り歩く奇祭で、床の間に飾っている香合は、その傘を模したものです。

桜の花が散り初める陰暦三月の頃疫病が流行したので、花の霊を鎮め無病息災を祈願したのが起こりと言われています。毎春、私たちに美しい姿を見せて散りゆく花に感謝と訣別の意を託し、初夏を新しい気持ちで迎えたいと思います。

香合(こうごう)に因みまして、今日は、私が習学させて頂いている香道直心流と鳩居堂のことを少しお話させていただきます。

鳩居堂初代熊谷直心(じきしん)は、熊谷直実から数えて二十代目になります。京都で医学や薬学を学び、寛文3年(1663)に本能寺の門前で薬種商「鳩居堂」を創業します。

四代目熊谷直恭(なおやす)は社会奉仕にも力を注ぎ、種痘摂取所「有信堂」を設け、息子の直孝(なおたか)はここに日本初の小学校として開校した「柳池小学校」の母体となる教育塾を設置します。

長年の社会貢献や明治政府への協力が認められ、明治10年(1877)、八代熊谷直行(なおゆき)に900年来伝承されてきた宮中御用の「合せ香」の配合がすべて伝授されます。そして、東京にも店舗を開きました。京都市中京区寺町の本店には、気軽に聞香のできるカフェもありますので、是非一度遊びにお出掛け下さい。

香には、大きく分けて二種類あります。天然の香木を細かく切断したものと、更にそれを粉砕して墨粉や蜂蜜と混ぜ合わせて好みの調合を施した丸薬のような練香があります。平安貴族は、自分オリジナルの練香の薫りを衣服に焚きしめていて、追い風で恋人もその訪問を悟ったと物語にあります。武士の時代になりますと、そのような悠長なことはしていられず、香木一種を鎧兜に焚きしめて戦に向かうことになりますが、首を撥ねられるときに恥じないよう、兜には特に念入りに行なったということです。

茶道も、香木は五月から十月、練香は十一月から四月までの季節に分けて使います。香合は、それらを入れる容器ですが、香木は木地もしくは漆塗りのもの、練香は陶器製の小壺に収めて点前に持ち出します。茶会に行かれて、床の間に香合が飾られているときは、炭点前を省略するという合図です。本来は、客が席入りして主客の挨拶が済むと亭主は炭を仕組んだ籠を持ち出して客の前で炉中に炭を入れていくのですが、大寄せの茶会などでは裏の水屋の仕事になります。

昨春より、茶道も悉く行事が中止となり寂しい限りですが、日々の木々の芽吹きや鳥の声に癒されています。

皆様にも、日常のひとときに一服のお茶や香りを楽しんでいただけたらと思います。。

香道直心流の稽古場は、お隣の行田市にもあります。須加の長光寺というお寺で、ご住職は海外でも、禅と香道を広く伝えておられます。

お寺では、新春の「初音香」に始まり、「花祭香」や「七夕香」など、季節ごとに香会も開かれますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

旧暦では、4月から夏に入ります。季節の変わり目ですので、どうぞお体に気を付けてお健やかにお過ごしくださいませ。


 表千家 笠原みおり
(熊谷市文化財保護審議会委員)




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